0-32:「内股ダンス」からの脱却! 根底にある「本質の違い」
さて、「積極的に膝を(内側に)回転させる」動きに対して
「これこそが、人間の自然の動きなのだ! 理想の踊りの基礎なのだ」
と感じる人もいれば、
「究極の内股立ち、内股歩きだ! こんなの、やりたくない!」
と感じる人もいるはず。
なにが違うのでしょうか?
■ 「日本の社交ダンス」は、「足を出すためにボディを回転させる」方式
日本の社交ダンスでは、「背中が丸くならないように!」という理由で、上腕を外旋させてホールドを作るのが一般的です。
【腕-22】から作るホールドでは、両足を揃えて、踵(ヒール)の上に立つことも出来るし、母趾球(ボール)の上に立つこともできます。
そのまま、足を出していくと、足の軌跡は(鋭いカミソリの刃で斬ったような)真っ直ぐ、直線的な動きになります。
例えば、左足を前方に出した時、支え足(右足)の膝は「左足の膝の裏側」の方向を向こうとします。 つまり、支え足の膝は内側に回転します。
この方法、足を真っ直ぐに出すことができますが、「大きく足を出す」ことはできません。歩幅が限定されます。
では、どうすれば、「大きく足を出すことが出来るか?」という話になります。
左足を前方に出していた時、支え足(右足)の膝が「内側に回転」するのであれば、
【腕-32】のように、あらかじめ、両足を揃えている時に、めいっぱい、支え足(右足)の膝を「内側に回転」させておいても良いハズです。
支え足(右足)側の鳩尾(みぞおち)を持ち上げておけば、ボディは回転します。
【腕-32】の姿勢、もしくは【腕-31】→【腕-32】の途中で、「左の肘を折り畳んでいく」と、左足の太腿が持ち上がります。
そして、左足の膝も「内側に回転」します。
ボディの回転が伴うので、「左足」を大きく出すことができます。
この時の手の動きは、「上腕:外旋(後ろ側に回転)」を掛けたまま、前腕を折り曲げながら、「肘と手首を同時に回転させる」動きです。
ボディ全体が、左右対称の動きになり、両腕を内側に倒したときには、両足の膝が引き寄せ合って内股(うちまた)になり、同時に、両足の膝が内側に回転するかと思います。
■ 「左右非対称なボディの回転」の途中で、足を出すと・・・
では、上の動きと、まったく異なる動きをやってみましょう。
「全ての手順」、「すべての概念」「全ての本質」が、上の動きとは逆になります。
● まずは、「左右非対称」な腕の動きで、ボディを回転させる
両手にマラカス(棒でも何でも良い)を持ち、足を肩幅に開き、マラカスを左右に動かします。 膝を左右に回転させないように、注意してください。
上腕を内旋(手前側に回転)させて、手首を動かして、前腕(肘~手首)にねじれを作る(上腕の回内/回外)ようにして、左右のマラカスを同じ方向に動かします。
そうすると、左右にボディは回転すると思いますので、これを交互に繰り返します。
「左右非対称の動き」になります。
で、【腕-78】←→【腕-79】の反復運動をおこなっている途中で、適当なタイミングを見計らって、片方の足の膝を持ち上げると、どうなるか???
ボディの回転が止まり、ボディが前方に進んで行きます。
ボディが前方に進めば、膝を持ち上げた足も、前方に進んで行きます。
● ボディが回転している途中で、膝を持ち上げると・・・・
マラカスを左右に動かした時よりも、確実で、なおかつ大きな動きを作り出すことが出来る方法が、こちら。
掌(てのひら)を下に向け、両肘を斜め前に伸ばし、上腕を内旋(手前側に回転)させたところから、「前腕(手首~肘)」にねじれを作っていきます。
一番簡単なのは、ガムテープの芯の中に、腕を通して、指を曲げる(拳を作る)方法。 指を曲げるだけで、ボディが回転します。
前腕の付け根(円回内筋)の部分に圧力を掛けてやると、腕は簡単に回内します。
腕の感覚に少し慣れて来たら、腕の付け根を抑えなくても、自然に、この動きが再現出来ます。
で、そこから、膝を持ち上げる。
【腕-37】のところから、もしくは【腕-36】→【腕-37】の途中で、左足の膝を持ち上げると、ボディの回転が止まって、左足が前方に伸びていきます。
基本的に、上腕を内旋させていれば、太腿は持ち上がりません。
回転しているボディの回転が、膝を持ち上げることで止まるのですから、回転していたエネルギーは、何かに変わっているはずです。
ボディの回転のエネルギーが、ボディを前方に進めるエネルギーに変わったと考えれば、わかりやすいかもしれません。(超!抽象的で、超!無責任な理論ですが)
● 前腕の捻れ(回内/回外)は、左右非対称
前腕には2本の骨があり、2本の骨が平行になったり、クロスさせたりすることで、捻れを作ることができます。
内側に捻れを作る(回内)させる筋肉は、肘の付け根の「円回内筋」と、手首の付け根の「方形回内筋」というのがあるみたいです。
面白いのは、この筋肉の動きは、左右対称になっていないということ。
ガムテープの芯を「肘の付け根」に通して、円回内筋に圧力を掛けます。
で、指を曲げて、拳を作っていくと、手首は「右」に回転します。
左右どちらも「右回転」ですが、左手は「内側に回転」、右手は「外側に回転」です。
ガムテープの位置を少しずらすと、手首の回転方向が、逆になります。
手首の付け根をサポーターで固定した時(方形回内筋に圧力を掛けたとき)の動きも、左右非対称になります。
小指側から指を曲げたとき(拳を作った時)は、拳(こぶし)は「右」に回転します。 左右どちらも「右回転」ですが、左手は「内側に回転」、右手は「外側に回転」です。
親指側から指を曲げたとき(拳を作った時)は、拳(こぶし)は「左」に回転します。
「左右の腕の同じ位置」を意識して、指を曲げていくと、「左右対称な腕の動き」にならずに、「左右非対称な腕の動きになります」
この腕の動きを反復させて、適当なタイミングで、膝を持ち上げてやれば、ボディが前方に進み、膝を持ち上げた足が、前方に進んで行きます。
● 左右非対称な動きでは、出した足は「真っ直ぐに進まない」
この方法で足を出すときの原理が、
「前腕にねじれを作って、ボディを回転させて、膝を持ち上げると、足が動く」
なのですから、出した足が「真っ直ぐ進む」ことは、ありません。
なんらかの補正を掛けない限り、出した足は、外側に曲がっていきます。
この先、次のページ以降で、詳しく説明していきます。
■ 「回転軸」の違いと、「動きの本質」の違い
この2つの動きには、絶対的な「違い」が2つあります。
まずは、一つ目は「回転軸」の違い
● 「腕-73」←→「腕-74」の動きの回転軸は、ボディのど真ん中!
ボディの回転を行うときは、肘を引き寄せた【腕-74】のタイミングになると思います。す。
支え足の膝が「内側に回転」しているので、支え足が吸い込まれていく「股間の位置」が、ボディを中心とした回転になります。
言い換えれば、回転軸(回転する円の中心)は、「ボディのド真ん中」。
「円の中心」に向かって、ボディが吸い込まれていくような感じの回転になります。。
実践では、「支え足の上に、しっかり体重を乗せて、回転しましょう!」という指導になってくると思います。
● 「腕-78」←→「腕-79」の動きの回転軸は、ボディの中に存在しない!
こちらの方法では、静止しているときの、回転軸は「左右の股関節」になります。
回転軸が2つある感じです。
ボディを左右に回転させながら、膝を持ち上げて、足が前方に進んで行ったとき、回転軸は、ボディ中から外れて、ボディの外に移動します。
ボディの回転が止まって、ボディが進み、足も進むからです。
前方に進んだ足が、着地した時点で、ボディ全体に回転運動が生じますので、あえていえば、膝を持ち上げて、動いた足の着地点が、回転軸と言えないこともないです。
● 「回転軸の違い」以前の問題として、「動きの本質」の違いがある
「社交ダンス」とは何か?を考える上で、
「大きく足を出すために、ボディを回転させる」
のと、
「ボディの反復回転の中に、膝を持ち上げるというアクションを加える」
のとでは、根本的な違いがあります。
外見上は同じに見えても、「動きの本質」が、まったく違います。
社交ダンスは、「音楽に合わせて踊りましょう!」という指導方法があり、「音を外した人はNG」ということになってます。
でも、そんなことより、「動きの本質の違い」の方が、よっぽど重要です。
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あ
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