0-23:「左右非対称」が前提となる、合理的なボディの動き
社交ダンスのホールドは、同じように見えますが、本質が全く異なる「2種類のホールド」が存在します。
「両腕を斜め前/てのひら下向き」・「両腕真横/てのひら上向き」からでも
「左手に割り箸・右手にどんぶり」・「左手にどんぶり、右手に割り箸」からでも
ホールドを作ることができます。 どのホールドも肘の高さは同じになります。
しかしながら、
上腕を外旋回させ、左腕の前腕にまったくねじれ(捻れ)」を作らないようにする
か、それとも
上腕を内旋させ、左腕前腕に回内(ねじれ)を積極的に作っていくか
か。
たった、それだけのことによって、まったく本質の違うホールドを作ることができます。
■ 「左右対称の動きの合理性」と、「左右非対称の動きの合理性」
人間の動きは、左側と右側は、左右対称(シンメトリ)になっているように見えます。
でも、人間の動きには、「左右対称な動き」と「左右非対称な動き」があります。
● 【腕-93】←→【腕-94】の繰り返しは、「左右対称な動き」になる。
まず、左右の上腕(肩~肘)を、外旋(外側・後ろ側に回転)させておいて、前腕(実際には手首を主体)を、【腕-93】内側に回転っさせたり、【腕-94】外側に回転させたりします。
足を開いたり閉じたりするタイミングに合わせて、これを繰り返せば、
「カミソリの刃で斬ったようなまっすぐな足運び」
になるかと思います。
● 【腕-98】←→【腕-99】の繰り返しは、「左右非対称な動き」になる。
前腕(手首~肘)に回内/回外(ねじれ)を掛けた時には、腕の動きは「左右非対称」になります。
左手首を「外側」に回転させると、右の手首は「内側」に回転します。
左手首を「内側」に回転させると、右の手首は「外側」に回転します。
両腕で、内側/外側が逆になるので「左右非対称」なのですが、両腕が右に回転/両腕が左に回転・・・という動きになるので、合理性が出てきます。
こちらの足運びは直線にはならず、足の軌跡は、大きなカーブを描きます。
そのかわりに、ある程度、大きく、敏感な動きに対応出来ます。
足運びを直線に近づけるには、なんらかの「ボディによる補正」が必要になります。
● 左右対称と左右非対称、2つの動きを使い分ける。
人間は、無意識のうちに、この2つの動きを使い分けているはずです。
社交ダンスでも、2つの動きを使い分けていると思われますが、「どちらかの動きに特化させる」ことで、ボディの動きに「自分の踊りの特徴」を与えていくことが出来るかと思います。
他人の踊りを見て、「素晴らしい!」と感じたならば、その本質が「左右対称な動き」なのか、「左右非対称な動き」なのかを見極めることは、極めて重要です。
「先生にダンスを習う」時には、「先生と同じ動き」を取得すべきです。
言い方を変えるならば、「自分と同じ動き」をする先生に習うべきです。
当然と言えば、当然ですね。
■ 「左右対象な動き」をするための「前腕にねじれを作らない」反復練習
背中が丸くならないように、前腕を外側に回転(外旋)させ、両方の中指同士をくっつけます。
このとき、左手の掌(てのひら)は下向き、右手の掌(てのひら)は、「おへそ」の方向を向けます。
これで、左右の足を交互に使って歩けば、前腕に「ねじれ」は生じません。
というより、前腕の2本の骨は、1ミリたりとも、動きません。
ほぼ完璧と言えるくらいの「前腕の回内(ねじれ)封じ」をすることができます。
「前腕の回内(ねじれ)封じ」によって、前腕の回内/回外は無くなりますが、腕を完全に固定させると、ボディの振動を腕で吸収することが出来なくなります。
そこで、左右の前腕が同時に「外側に回転したり、内側にしたり」という動きが発生します。 (鏡で映したような)左右対称の動きです。
腕の動きが、左右対称ならば、足の動きも左右対称になります。
足は、前後左右に、真っ直ぐに進みます。
斜めに足を出そうとしたり、支え足の前に足を出そうとすると、膝がねじれるか、ボディがねじれるか、どちらかになります。
この性質を利用して、意図的に足を斜め方向にだして、膝を左右にねじって、ボディを回転させるのが、上級者向けの高等テクニックとなっているようです。
左右対称の腕の動きでは、
両腕前腕を「外側」に回転させると、両方の手首が遠ざかる。
両腕前腕を「内側」に回転させると、両方の手首が近づく。
という傾向があるかと思います。
そこで、両方の手首の距離(間隔)を一定に保つためのエクササイズがあります。
両腕前腕を「外側」に回転させようとすると、両方の手首が遠ざかろうとします。
ここで、両手の人差し指を繋ぐ「ヒモ」があると、どうでしょうか?
両方の手首が遠ざかろうとしても、ヒモがあるので、距離は一定に保たれます。
このとき、動くのは、上腕~肩~肩甲骨に掛けての筋肉です。
上腕~肩が、外旋(外側/後ろ側へ回転)することで、手首の距離を一定に保つことができるようになります。
これを徹底的に反復練習すると、無意識に「上腕が外旋」するようになり、「前腕の回内/回外」が全く掛からないボディを作り出すことが、可能になります。
■ 「前腕の回内/回外」と、左右非対称なボディの動き
社交ダンス(スタンダード種目)で、「左右非対称な動き」を積極的に使えば、「わずかな筋力」だけで、踊ることができます。
「前腕の回内/回外」は、非常に複雑であり、なおかつ、ボディ全体に与える影響は大きいのが特徴です。最低限の筋力で、大きく素早い動きをする・・・という目的には有効な踊り方になります。
なので、前腕にどんな形で回内/回外(ねじれ)を掛ける(相手に掛けて貰う)と、ボディはどんな反応を示し、ボディはどれくい動くのか? ということを把握することが、重要です。
● 膝を上げると拳が出来る、拳ができるとボディが回転!
例えば、【腕-25】のように、肘を斜め前に伸ばして立った時(上腕は内旋)、
前腕に回内/回外を掛けてやるだけで、ボディは回転します。(股関節が動く)
例えば、「肘の付け根」を固定して、指を曲げて拳を作る(指が曲がる方向に動く)だけで、ボディは回転します。
足の膝を持ち上げた時や、踵を浮かした足に体重を掛けた時に、どちらかの手の指が「曲がる」方向に反応するのであれば、手の指が曲がるときの筋肉の動きで、前腕に回内/回外(ねじれ)が起き、ボディが回転します。
膝を持ち上げても、踵を浮かした足に体重を掛けても、腕の筋肉が全く反応しない人もいると思います。(日本の社交ダンス教室の多くは、上腕を外旋させてホールドを作る指導を行ってます。上腕を外旋させると、足の動きに対して、前腕が全く反応しなくなります。)
前腕の回内/回外に伴う「ボディの回転」に連動させて、足を動かして行けば、いろんな方向に進むことが出来ます。
前腕の回内/回外は、複数の筋肉が同時に動くので、非常に複雑な動きをします。
とりあえず、「最低限の特徴」を覚える事から、始めるのが良いと思います。
●回内/回外の「左右非対称性」を把握する
「左手に割り箸」を持った時と、「右手に割り箸」を持った時では、指の役割が違ってきます。
【左-11】→【左-12】のように、円回内筋に相当する部分を、引き寄せながら(収縮させながら)肘を曲げて行った場合、左手の手首は「口元の高さ」に動きますが、右手の手首は「おへその高さ」に動きます。
このことから、「左手に割り箸」では「円回内筋」を使った回内を利用して、「右手に割り箸」では、それを利用していない(別の筋肉を使っている)であろうと予想できます。
● 前腕の回内、回外は、想定を遙かに超える複雑怪奇な動き
日本の社交ダンスが、「前腕の回内/回外」を使わないようにしているのは、理由があるはずです。
「前腕の回内/回外」は、複数の筋肉が絡んでくる複雑怪奇な動きなので、
「複雑な腕の動きを使わずに、しっかりと腕を固定して踊りましょう!」
と教える方が、シンプルなんですね。
「子供も高齢者も、競技会のチャンピオンも、みんな平等、同じ基礎!」という、社交ダンスの概念を貫けば、自ずと、そういう結果になります。
肘と手首を連動させて、同じ方向に回転(内側)させる動きはシンプルです。
上腕と肩を外旋(外側に回転)させて、前腕にねじれが起きないようにしてから、手首を回して、左腕前腕に【左7】→【左9】の回転を与えるだけでいい。
ところが、前腕の回内動作は、複雑です。
前腕の回内には、肘の付け根にある「円回内筋」の他に、手首の付け根にある「方形回内筋」というのもあります。
【左3】→【左4】の動きと、【左0】→【左2】の動きが、僅かな時間差で、同時に加わると、その影響でボディがどんな風に動くなど、簡単には予想がつきません。
前腕の回外に使う筋肉には「回外筋」というのが存在するようです。
これだけでも、複雑怪奇でなのに、これらの筋肉の動きを、邪魔したり促進したりする動きが、たくさんあります。
例えば、人差し指の力を強くすると、前腕の回内(ねじれ)が掛かりにくくなりますし、逆に薬指や小指を上手に使うと、前腕の回内(ねじれ)が、やりやすくなります。
いろんなものが、絡み合ってるから、複合な動きになってきます。
「複雑なものは排除」して、小学生から高齢者まで、みんな平等な基礎を作ろう!という「社交ダンスの標準化作業」において、真っ先に排除される(排除され続けてきた)のが、「上腕の回内/回外」であるってことです。
■ 実際の「左右非対称」な動きを、実際にチェックしてみる
●「肘の付け根」を固定したときの、手首と拳(こぶし)の回転方向
今度は、「円回内筋」や「回外筋」に絡んだ動きだと思いますが、こちらも複雑です。
ガムテープを腕に通します。
ガムテープの芯と、腕に隙間がないように、無理矢理に押し込むのがベスト、
あとは、5本の指を曲げて、拳(こぶし)を作るだけ。
【左4】【右4】のように、指を曲げて行くに従って、手首は右に回転します。 このとき、左手は「内側」に回転(回内)、右手は「外側」に回転(回外)になります。
ただ、ガムテープの芯を数cmずらすだけで、【左5】【左6】のように、手首が左に回転するガムテープのポイントが存在します。
ガムテープを腕に通して、拳(こぶし)を作ったり、手の指を開いたり、そういうのを繰り返していけば、ガムテープの芯の位置の腕の筋肉の感覚の変化が把握できるようになってきます。
そうすれば、ガムテープの芯がなくても、拳を作るだけで、筋肉を反応させる(=前腕を回内/回外)させることが、できるようになってきます。
● 「手首の付け根」にサポーターを巻いた時」の拳(こぶし)の回転方向
これは、「方形回内筋」に絡んだ動きだろうと思いますが、なぜ、こんなふうになる(左右非対称な動きになる)のか、さっぱり、わかりません。
「手首の付け根」に、サポーターをきつく巻き付けます。
そして、指を握り締めて、拳(こぶし)を作っていきます。
実践では、 左右の腕を同時に、ゆっくり小指側から拳(こぶし)を握っていき、一気に力を抜く・・・という使い方は、わかりやすいと思います。
【左1】【右1】左手も右手も、小指側から拳(こぶし)を握っていくと、手首は「右」に回転します。 ネジを締める方向、水道の蛇口を閉める方向です。
このとき、左手は「内側」に回転(回内)、右手は「外側」に回転(回外)になります。
【左2】【右2】左手も右手も、親指側から拳(こぶし)を握ってくとき、もしくは、小指側から作った拳の力を抜いたときには、手首は「左」に回転します。
● 回内(ねじれ)を掛けるか掛けないか、違いが出るのは「左腕」
これは、回内(ねじれ)を掛けるか、掛けないかによる、左右の腕の比較です。
「手首を内側に回転させなさい」という命題があったとしましょう。
右手は、前腕にねじれを掛けない【右9】においても、前腕にねじれを掛ける【右2】においても、人差し指と親指を使います。
前腕を回転させる事によるボディへの影響は、「ほとんど大差なし」です。
ところが、左腕の場合、前腕にねじれを掛けない【左9】では人差し指を重視します。
回内を掛けて、前腕にねじれを作る【左1】では、小指と薬指を重視します。
左腕場合、どの指を重視するかによって、前腕扱いが大きく変わります。
そして、前腕の扱いが変われば、ボディの動きが、大きく変わってきます。
何度もイギリス留学を繰り返し、自らの踊りを「イングリッシュ・スタイル」と自称する先生が、このような左グリップの使い方を指導し、プロ教師を養成させ、プロ教師資格を交付するための教師試験を行えば、「左腕前腕の回内」を使って踊るダンサーが徹底的に排除される運命に晒されるであろうことは、容易に想像できます。
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あ
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