0-27:「膝を左右にねじる」ことが、CBMの絶対条件なのか?
社交ダンス(スタンダード種目)は、通常の歩行と比べて、片足で立っている時間が長かったり、足の上で回転を掛けたりしますので、バランス感覚が難しくなります。
例えば、両足を揃えて立ち、ゆっくりと、左足を前方に伸ばしていくケース。
その際、
「膝と爪先を同じ向きにして、膝を捻らないように、左足を出しなさい」
といういう条件で、左足を出した時と
「積極的に、右足の膝を回転させて捻りながら、左足を出しなさい」
といういう条件で、左足を出した時では、動きが変わってくるはずです。
■ ダンスを踊るときには、意図的に「膝」を回転させているのか?
まずは、本題に入る前に、余談・・・・とうか、前回の復習から。
上のCG図(左のCGから右のGCへの変化)は
「両足を揃えて静止した姿勢から、左足を前方に伸ばしていく」
という流れになってます。
この時、左足を前方に伸ばしていくに従って、左腕を、少し後ろに引いています。
では、この時、膝(ひざ)は、どのように変化しているでしょうか?
上腕の回転方向によって、変わってきます。
このCGでは、上腕の筋肉をみると、上腕を内旋さえているように見えますが、かなり微妙ですね。
● 上腕「外旋」なら、支え足の膝は「内側に回転」します
上腕を外旋させて(外側、後ろ側に回転させて)、右足で立って、左足を前方に動かしたとき、右足の膝は、左足の「膝の裏側」の方向を向くと思います。
つまり、左足(動く足)が、右足(支え足)の真っ正面(CBMPとか言う、難しい言葉があるらしい)に来ない限りは、
「右足(支え足)の膝は、内側に回転している。または、回転しようとする」
ということになると思います。
その「支え足の膝を内側に回転させる」動きを、意識的に、かつ忠実に再現すれば、
大きく左足を、前方に出していくことができるはずです。
● 上腕「内旋」なら、支え足の膝は回転しない。
上腕を内旋させて(内側、手前側に回転させて)、右足で立って、左足を前方に動かしたとき、右足の膝は、回転しません。
前腕の動きに連動して、股関節の動きによって、ボディが回転するので、膝の回転はありません。
■ CBMと称する怪しげな動きと、「膝の回転」
ここから、本題に入ります。
この文章には、「とても大きな落とし穴」が存在します。
CBM、つまり Contrary Body Movement (同じ側のボディの動き)の定義の大前提になってるのが、「膝の回転」であるという点です。
言い方を変えると、
「膝の回転」が無ければ、CBMは起こらない。
という意味になります。
村上尊一先生は
「膝を右に回した場合、肩が左に回ります。逆も同じです。
これは、下半身と上半身が逆に回転することです。」
「重い上体を慣性を慣性の法則にしたがって、上手に進行させる時に、
自然に運動で、特に意識しなくても起こります。」
と書いてあります。
ちょっとまってください!!!
これって、ほんとうに「自然な動き」なのでしょうか?
● 「膝を右に回した場合、肩が左に回ります」という動きの矛盾点
膝を回転させるには、上腕を外旋させると、わりと簡単です。
膝を内側に回転させるとき、支え足側の鳩尾(みぞおち)を持ち上げると、膝と一緒に、ボディ全体が回転します。
この習性がある人は、(日本人のプロ教師が教える)CBMを使うことが出来ません。
膝を回転させるとき、動かしたい足側の鳩尾(みぞおち)を持ち上げると、膝は回転しますが、ボディは回転しません。
これが、村上尊一先生の言う、「慣性の法則」なのか、ボディの傾きによるモノなのかは、よくわかりません。
足を出すのであれば、【腕-21】→【腕-27】、【腕-23】→【腕-29】のように、あらかじめボディ全体を回転させてから、ボディの傾きを変化させていけば、簡単に足を出していくことができますが、これだと村上尊一先生の言う「慣性の法則」には、該当しません。
上腕を内旋させると同時に、前腕の回内(手首と肘を捻る)を行うことで、ホールドを作ると、膝は回転せず、膝は爪先と同じ向きになります。
● CBM を「膝の回転」と結びつけるのは、無謀である
ボディを回転させる場合、膝と股関節を同時に回転させようとすれば、「ボディの軸」が無くなって、回転動作が、非常に不安定になります。
「膝を積極的に回転させたい」ならば、上腕を外旋(つまり、後ろ側に回転させて、ボディを反らせる感じ)でホールドを作ればよく、その場合、股関節は回転しません。
「膝を回転させなくない」ならば、上腕を内旋(つまり、手前側に回転させて、ボディの力を抜く感じ)でホールドを作ればよく、その場合、膝は回転しません。
どちらでも、左足を出すことは可能です。
「膝を左右に回転させたとき」と、「膝を回転させないとき」で、どちらが、無駄なく大きくな動きが出来るか?
同じ動きをするのであれば、膝を回転させない方が効率的が動きができるはず。
だとすれば、社交ダンスのCBMは、「無駄な動きをやって、膝にダメージを与えること」なのでしょうか?
● 通常歩行における「膝の回転の有無」は、腕の使い方で決まる
ごくごく普通の通常歩行、あるいは「ナンバ歩き」の両方に言えることですが
「膝を右に回した場合、肩が左に回ります。逆も同じです。」
「これは通常早く歩くとき、上手に肩と腰でバランスを取るために、
誰もが行ってる自然の動作なのです。」
というのが、成立するかどうかは、大いに疑問です。
「腕に適度な回転を与える」ことで、「膝の回転を止めることが出来る」からです。
膝を左右に大きく回転させた方が、効率がよく大きく走れるのか?
膝を回転させずに、股関節をフルに使ったほうが、効率がよく大きく走れるのか?
これは、日常習慣であったり、個人の考え方であったりするはずです。
■ 「複数の腕の動き」があるならば、「複数のボディの動き」がある
日本の社交ダンスの一貫した特徴(あきらかな弊害)は、
「教え方が違っても、社交ダンスの基本は、世界共通、一つだけである」
「自分の教えているのは、イングリッシュ・スタイルである」
という、断固とした考え方に基づいているようです。
でも、実際は、「割り箸を持つ手」を変えるだけで、ボディの動きが大きく変わる。
右手に割り箸を持つと、上腕外旋。
左手に割り箸を持つと、上腕内旋になるからです
なので、両方を試してみれば、両方のボディの動きの違いを把握できます。
CBMというのは、
「前進または、後退するときに、回転の動作を起こすために
出て行く足の反対側の上体を振り出すことです。」
「ナチュラルターンの1歩目で、
(男子)右足を前進する時、
左側の上体(肩や肘)が進行方向に出されることです」 と、村上先生は説明されています。
これに該当する動きは、「膝を回転する方法」と「膝を回転させない方法」の両方あります。
どちらも、「CBM」という説明条件を満たしているのですが、村上先生は、
「膝を回転させる方法こそが、本来のCBMの動きである!」
と言っているわけです。
そりゃそうでしょう。
「膝を回転する動き」と「膝を回転させない動き」、全く異なる両方が「CBMの動き」に該当するなんて、あり得ませんから。
● 左手に割り箸を持ち、右足の内踝に体重を掛けると、左ボディが前に出る
例えば、「社交ダンスは、2階席を見ろ!下を向くのはNGだから、上を見て歩く練習をするぞ!」とかなんとか言いながら、道路を歩いていたとしましょう。
左足で、おもいっきり縁石を蹴っ飛ばして転びそうになったとしましょう。
このとき無意識に右側の足が、前に出て姿勢を立て直すことが出来れば、転ばずに済みます。
「どんな時でも視線は2階席」とか言ってると、悲惨なことになります。
それと同じように、左足の内踝(うちくるぶし)に体重を乗せようとした時に、
「ボディが無意識に、膝を捻らずに済む位置まで移動してくれる」
としたら、「右膝を捻らず、左ボディを前に出す」ことが出来ます。
【左-01】のように、右足を前に出して、V字型に開脚し、右足の踵を持ち上げた姿勢から、「右足の内踝(うちくるぶし)に体重を乗せる」ためには、「左ボディを、大きく前に出していく」ことになるのですが、これが無意識に出来れば、ありがたい話です。
両手・両足、各4本の薬指と親指が主役になったとしたら、「膝と爪先は同じ方向」が再現出来ますので、左ボディ(左肩甲骨・左骨盤)は、前方進んで行きます。
● 右手に割り箸を持ち、右足の内踝に体重を掛ても、ボディは動かない
ところが、右手に割り箸を持つと、同じことができません。
人差指と中指が主役になりますので、「膝は大きく回転する」ようになります。
【右-01】から、右足の内踝(うちくるぶし)に体重を乗せようとしても、うまくいきません
【右-07】のように、右足の内踝が自分のへその方向を向いてしまい、「超!内股」になってしまいます。 「超!内股」で、右足の内踝に体重が掛かります。
そして、その先は、【右-08】のような、超!内股で、膝が直角に曲がった「爪先ツンツン歩き」。 最悪、抜き足・差し足・忍び足・・・・そんな感じになります。
● 支え足の膝を「内側に捻る」ことで、左ボディは前に出る。
右手に割り箸を持つと、人差指と中指の力が強くなって、相対的に薬指の力が弱くなります。 結果として爪先を、膝と同じ向きに保つことが難しくなってきます。
【右-01】~【右-08】のように、「膝と爪先は同じ向き」という命題が上手くいきません。 ならば、発想の転換! 逆手の発想!
膝関節は、屈曲方向には大きく動きますが、左右の回転方向の可動域は狭いです。
膝関節が、左右に回転するように、日頃からトレーニングするのも、一つの方法かもしれません。(ただし、膝に致命的なダメージを与えたとしても、自己責任!)
爪先をめいっぱい開脚にしておいて、膝をどんどん内側に回転させながら、真ん中へと引き込んで(倒して)いけば、ものすごいパワーで、左ボディが前方に進んで行きます。
背中に棒を挟んでこの動きをやると、「膝関節の内側への回転」が、どのくらいボディ全体(左ボディ全体を引っぱり出すためのパワー)に影響してるかが、明確になります。
■ 「膝を捻らない」習慣のある人は、CBMが掛からない??
村上尊一先生の説明が正しければ、
「膝と爪先は、常に同じ向き」という条件下では、CBMは存在し得ない!
「膝を捻らずに歩いている人は、何年経っても、社交ダンスを踊れない!」
ということに、なってしまいます。
社交ダンス以外のダンス、スポーツ、武道・武術なので、「膝を捻らない」という点に気をつけている人は、村上先生の言うような「CBMの習慣」は、もともと持ち合わせていない思われます。
日常的に、「膝を左右に回転させながら、歩いている」人は、社交ダンスの上級者になれる・・・・ということになります。
● 社交ダンスで、両脇の筋肉は、使う?使わない?
膝の左右の回転を積極的に使う人(股関節の動きを使わない人)は、「両脇の筋肉」を使わないはずです。
両脇の筋肉を使うと、膝の回転が出来なくなるばかりか、(膝と一緒に)股関節が動いてしまうので、ボディの軸が無くなり、不安定になってしまいます。
逆に、股関節の動きを積極的に使う人(膝を回転させない人)は、「両脇の筋肉」が非常に重要になってきますし、実際、積極的に使っているはずです。
このホールドで、ボディを左右に回転させた時、「両脇の筋肉」が大きく動くことが確認できると思います。
この外国人教師、およびにこの外国人の子弟に社交ダンスを習った人は、
「CBMというものが出来ない」「CBMが全く理解できていない」
「使ってはいけない、両脇の筋肉を積極的に、使っている」
ということになってしまいます。
膝を回転させないときボディの動きでは、「両脇の筋肉」の重要性は高いです。
ビル・アービンにせよ、マーカス・ヒルトンにせよ、「そんな外国人、しらねぇよ」って人が多いですし、「膝の回転が無い動き」は、日本国内では、全然インパクトないし、そもそも「なんの参考にもならない」ので、取り上げられない・・・・というのが現実なのでしょう。
 |
|
あ
|
|